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後半 「人類を救う脂溶性ビタミンA&D」

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後半 「人類を救う脂溶性ビタミンA&D」

2016年5月22日(日)10:00~17:00


「人類を救う脂溶性ビタミンAD


大友博之先生

 

○大友先生プロフィール

 

・慈恵医科大学卒業

・渋谷セントラルクリニック総院長

・医療コンサルティング会社CEO

・西洋医学的鍼治療普及協会理事

 

@AP渋谷道玄坂 渋東シネタワーGルーム



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・脂溶性ビタミンにこだわるようになった背景

 

昔、自分は保守的な医者だったので、サプリメントがそこまで効くものだとは思っていなかった。また脂溶性ビタミンは、過剰摂取による副作用の問題などを気にするあまり、どうしても水溶性ビタミンばかりに頼っていた時期もあったが、実際に脂溶性ビタミンを使ってその効果を実感してしまうと、今ではビタミンAD無しでは外来ができないといっても過言ではないという状態になっている。

 

現代社会では、有用なサプリメントを利用しなければ、未病や予防は難しい。その理由は、日本では緯度の問題でビタミンDはまず足りない。東京に住んでいれば食事から必要量を摂ることも難しく、サプリメントが必要になる。

恵比寿で臨床をしていた時には、運動だけでどれだけ良くなるのかということにチャレンジしていたが、サプリメントを扱うようになって、ライフスタイルの話をせざるを得なくなり、それ無しでは処方できないほど密接な関わりがあると感じた。

 


○慢性炎症は万病のもと

 

糖尿病、ガン、うつ、慢性疲労、心筋梗塞、アルツハイマー、パーキンソン病、リウマチなどの膠原病、神経障害性疼痛、筋肉痛などの原因には、必ずと言っていいほど慢性炎症が関わっている。したがって慢性炎症をコントロールすることが、全ての治療のプロセスをコントロールすると言ってもいいほどである。今までの医療では、これらの個々の病気に対して、抑えることばかりを中心に議論がされていたが、慢性炎症を考えていくことで、もう少し包括的に物事を捉えられるのではないかというのが、再生医療が発展して来たことによる最近のトレンドである。このような考え方は、日本語ではまだ論文などのデータがあまり見つからないほど、最新のものである。

 

・慢性炎症の原因

 

1. 高温調理(糖化ストレス)

2. 糖質過多

3. 肥満

4. 腸内環境

5. ストレス

6. エクササイズ過剰

 

これらに共通することは、酸化ストレスであり、身体が錆びるということである。例えばマラソンが終わった後の選手の状態を調べてみると、全ての生体機能、免疫力が下がっており、不整脈が出て、体内も強く酸化していることから、スポーツとしては良いとしても、酸化ストレスの面から見るとあまり良いものとは言えない。

 


・慢性炎症とは何か?

 

鍵になるのは、TNF-αという炎症性サイトカインである。これが多くあることによって

 

1. 成長ホルモンの分泌低下(老化の促進)

2. 肥満(インスリン抵抗性による)

3. うつ、元気が無くなる

4. リウマチ、膠原病、慢性の痛み

5. にきび、肌荒れ

6. ガンのリスクの上昇

7. 糖尿病、高血圧

 

などの影響が出てくる。この物質が作られる原因として

 

1. グルテン不耐

2. 乳糖不耐

3. 飲酒

4. コーヒー過剰

コーヒー自体(カフェイン)が問題ではなく、豆を運ぶ過程で何らかの菌に感染しているか、農薬によるエンドトキシン産生が原因ではないかと言われている。

5.腸内フローラの悪化

 

などがあり、これらが肝臓などで酸化ストレス起こり、炎症性サイトカインが作られるのではないかと考えられている。炎症性サイトカインが出ることによって、インスリン抵抗性が高まる→脂肪細胞が増える→TNF‐αが分泌される→さらにインスリン抵抗性が高まるという悪循環に陥る。

すなわちダイエットをすることの根底は、インスリン抵抗性をどう下げるかが最も重要なテーマであり、なぜ太っていることが健康に悪いのかということの根拠となるものである。

グルテンについては、最近ではテニスのジョコビッチ選手が話題になっている。彼はピザ屋の息子で、幼いころから自分の家のピザを食べて育ってきたが、小麦のタンパクであるグルテンと乳糖が豊富に含まれるピザなどの食品を止めることでとても調子が良くなり、パフォーマンスが上がったということが書かれた本がよく売れている。これは慢性炎症が減ったことによる作用である。

和食を摂ることで、グルテンはほぼゼロにできるので、しばらく続けて調子が良ければグルテン不耐の可能性がある。

 

TNF‐αの影響を一言で言うと、老化の促進である。

 

*サイトカイン

免疫システムの細胞から分泌されるタンパク質で、標的細胞は特定されない情報伝達をするものをいう。多くの種類があるが、特に免疫、炎症に関係したものが多い(Wikipediaより抜粋)

 

*エンドトキシン(内毒素)

内毒素とは、グラム陰性菌の細胞壁の成分であり積極的には分泌されない毒素を指す。英語名をそのまま用い、エンドトキシンとも呼ぶ(Wikipediaより抜粋)

 

 


・慢性炎症と痛み

 

筋筋膜痛、線維筋痛症の原因についてははっきりしていなかったが、2005年に

 

1. 骨格のゆがみ

2. 関節可動域の低下

3. 代謝的要素

貯蔵鉄であるフェリチンの減少。鉄の供給源は主に肉であるため、鉄が低い場合は、タンパク質も不足していることが多い。

4. 甲状腺機能の低下

5. ビタミンDの低下

 

が関わっていることが明らかになった。

 

例えば原因のはっきりしない慢性の腰痛があった時に、脳は痛みを感じた時に過去の記憶と今の状態を統合して痛みをつくっているが、これらの患者ではTNF‐αとインターロイキン6が上昇しており、慢性炎症があるということが疑われた。

このようなケースに対して徒手療、カウンセリングを30日間のプログラムで行ったところ、10日目まではTNF‐αが減少したものの、それ以降は変化が無かった。その理由はベースに体のどこかに慢性炎症があるか、それを処理できない状態になっていることが考えられる。その結果、症状は良くなっても、治療を止めるとまたすぐぶり返してしまうという状態に陥る。

したがって慢性の問題では、治療だけでなく、運動や食事といったアプローチを加えていかなければ良くならない。変形性膝関節症やうつ病などでもTNF-αが高くなっている。

 



○ビタミンA、ビタミンDの重要性

 

ビタミンA、ビタミンDは慢性炎症を抑える作用があり、使い方を間違えなければ薬よりも効くという印象がある。これらのビタミンは製薬会社が特許を取れないため、ナチュラルなものは薬ではなくサプリメントしか基本的には無い。活性型ビタミンDとして売られている薬は、それに似た物質でつくられたものである。ビタミンADEKが脂溶性ビタミンで、細胞が正常に機能するために非常に重要である。

 

・ビタミンAと細胞の再生

 

1.成長ホルモンの産生を促す

2.抗酸化物質としてフリーラジカルによって生じる慢性炎症を抑える

3.皮膚や粘膜の維持

4.視覚の正常化、成長及び分化に関与(夜盲症、視覚障害、ドライアイ)

5.不妊症、不育症、PMS(月経前症候群)との強い関連(女性ホルモンの産生に関わる)

6.子供の正常な成長

7.味覚、嗅覚

 


・ビタミンAと免疫

 

1. 呼吸器感染症に対する抵抗力の獲得

2. ビタミンAクリームによる基底細胞がん予防

3. にきび、アトピーや乾癬のような皮膚症状の治療

4. 副鼻腔や気管支の感染症

5. 細胞、寄生虫感染症の予防及び回復

 


・ビタミンAと甲状腺


ビタミンAと甲状腺は強い相互関係にある。      

甲状腺ホルモンの産生にはヨードが重要で、日本食にはヨードが豊富に含まれているため、不足することはないと言われてきたが、現在では腸内環境のことが取りざたされるようになり、食べたからと言って必ずしもそれが吸収されているとは限らないということが分かってきた。


ビタミンAと甲状腺の関連として


1. ヨードの吸収能力を高める

2. 甲状腺を活性化させる

体内に貯蔵されているFT4というホルモンの状態からFT3という実際に使われる形に変換する役割を持っている。ビタミンAが不足していると、甲状腺ホルモンは作られているが、働けないという状態になってしまう。

 

というものがあり、逆に甲状腺の機能が低下していると、肝臓と腸管の壁で植物性のビタミンAの原料であるβカロテンをビタミンAに変換できなくなる。このような状態の人(甲状腺機能が低下している人)では、皮膚が黄色っぽくなってくるという特徴がある。問診としては、最も典型的な症状である冷えやむくみが無いかをまず確認する。またアルコールを摂ることによって肝機能がアルコールの解毒の方を優先するため、ビタミンAへの変換機能が低下する。

腸内環境が悪化していると、ビタミンB の合成能力も下がってしまうだけでなく、ビタミンB1分解酵素であるアノイリナーゼ(チアミナーゼ)が作られる。したがって腸内環境が悪ければ、ビタミンはどんどん壊されるようになり、良ければ作られる方に働く。

 

*アノイリナーゼ(チアミナーゼ):ビタミンB1分解菌が寄生すると、この酵素が働き、腸管内で食物中のビタミンB1を破壊するため、ビタミンB1欠乏症の原因のひとつになる。(Wikipediaより抜粋)

 

・ビタミンAが不足している時の症状


1. 甲状腺機能低下症の症状がある

2. 風邪を引きやすい

3. 髪の毛が薄い

4. にきびが多い

5. ドライアイがひどい

6. 不妊症

これらが重なっていれば、不足の可能性がある。

 


・甲状腺機能が低下している時の症状

 

1. 冷え、むくみ

2. 便秘

3. 肥満

4. うつ

5. 記憶力、認知の低下

6. 爪割れ、肌の乾燥、薄い毛

 

病院で甲状腺機能を検査していたところ、正常と言われたというケースがよくあるが、正常の範囲がどれくらいあるのかということを認識しておく必要がある。限りなく異常に近い正常である場合、症状としてはすでに低下症と同程度のものになっていてもおかしくはない。甲状腺の機能自体は少なからず低下している。

また糖尿病があっても、ビタミンAへの変換機能は低下する。その結果、甲状腺の機能が低下し、余計に太りやすくなる→脂肪細胞からの炎症性サイトカインにより慢性炎症が起こり、さらに悪化するという悪循環に陥る。そのため糖質制限をする際にビタミンAをプラスするかどうかで結果は劇的に変わってくる。

 

*甲状腺ホルモンは、T3T4があり、T3T44~5倍の生理活性があり、甲状腺から分泌されるのは全体の約20%で、残りは末梢でT4からT3に変換される。T399%は甲状腺ホルモン結合タンパクであるTBGThyroxine Binding Globulin)、アルブミンと結合しており、結合していない0.3%の遊離T3FT3)がホルモンとしての働きを発揮する。

 


・ビタミンAの供給源

 

ビタミンAの供給源は、卵、牛乳、レバー、肝油、クリームチーズ、バターなどの動物性のものであるため、脂肪の分解、吸収機能が低下している人(脂っぽいものを食べるとお腹を下す人など)では、ビタミンAをうまく吸収できていない可能性がある。

このような脂溶性ビタミンでは、過剰摂取の話題が必ずあがるが、実際は摂れていないケースがある。特に日本では乳糖不耐症が多いため、牛乳、クリームチーズからは摂取できない場合もある。

乳糖不耐症の人は、ビタミンAの前駆体であるβカロテンをホウレンソウ、サツマイモ、ニンジンなどから摂取する必要がある。

 

嚢胞性線維症という女性に多い乳房の線維症でも、ビタミンAは劇的に効果を示す(ヨードとの組み合わせが特に有効)。

 


・ビタミンAを積極的に摂るべきでない人


1. 妊娠希望の女性

2. 妊娠初期の女性

3. にきびの治療でビタミンAのクリームを使用している人

 

とされているが、妊娠している女性の30%がビタミンA不足に悩んでいるというデータもある。ビタミンAの過剰摂取は、胎児に奇形を生じるということが知られているが、ビタミンA不足の母親から生まれた子供は、正常に発育できないという事実もある。

一部の先進国を除いて発展途上国では特にビタミンAは足りない栄養素として認識されているため、積極的な摂取が勧められている。βカロテンの妊婦に対しての影響はまだ分かっていないが、喫煙者でβカロテンを多く摂っていると肺ガンのリスクが上がることが示唆されている。しかし、関係ないとするデータもあるため、議論が分かれるところである。

ビタミンAで処方した場合についても、今までは免疫力を上げるため有効だとされていたが、そうではないとするデータも出てきており、処方する際には喫煙以外にビタミンA不足が疑われる症状があるかを見極めて行っている。

このような患者の診方をする背景には、出身校である慈恵医大が、日本の医学部で唯一イギリス医学を教えている大学で、「病気を診ずに病人を診よ」というのがテーマになっているということがある。特に再生医療の分野でこの考え方は非常に重要であり、包括的に人を診る必要がある。そのため、これは絶対正しいということはなく、その人の症状を診て処方をして、効果を確認して、考えるというプロセスを踏んでいく。

ビタミンAの過剰害を疑う場合の指標として有効なのは頭痛で、

 

 


○ビタミンDについて


脂溶性ビタミンで、甲状腺や脳下垂体の機能維持に非常に重要な働きをしている。

ビタミンDは許容範囲が広いため、ビタミンAよりも扱いやすいという特徴がある。

 

・ビタミンDの効果

1. 骨粗鬆症

2. ガン予防

3. 筋量増加作用、脂肪抑制作用

4. 副甲状腺ホルモン産生、分泌抑制作用

5. 発毛調節作用

6. 免疫調節作用

7. 神経の修復

 

神経痛の治療薬として、リリカが処方されることが多いが、リリカはインスリン抵抗性が上がり、太りやすくなることが報告されており、もし薬が効いているのであれば、ビタミンD を足して、インスリン抵抗性を抑えるべきである。また神経の修復としてメチコバール(ビタミンB12)が処方されることがあるが、ビタミンB12だけでなくコンプレックスとして摂らなければ効果が発揮されない。

 


・ビタミンDと慢性炎症

 

ビタミンDは慢性炎症(TNF-α)を抑える働きがある。

これを踏まえて、筋肉痛などの筋肉の治療をするためのポイントは

1. ビタミンDを摂る(サプリメントまたは日に浴びる)

2. 貯蔵鉄を増やす(肉を食べる)

3. 骨格筋を緩める(治療を受ける、ストレッチをする)

4. 筋トレをしてマイオカインを出す

 

うつ病の治療であっても行うことはほとんど同じである。

1. ビタミンDを摂らせてTNF-αを抑制

2. TNF-αを増やしてしまうような食生活を止めさせる

3. 腸内環境を整える(自分が吸収できない食べ物を見つける)

 


・くる病とビタミンD

 

8090%は日光を浴びることによってつくられ、1020%が食事から摂取するものである。食事で摂った場合はビタミンD2という状態であり、これをビタミンD3に変換する必要がある。

2005年のデータでは、ほとんどの日本人が日照時間に関わらず1年を通して必要量に達していないという結果が出た。

その結果として、若い女性が妊娠直後からずっと腰が痛いと訴えている場合、骨が折れていることもある。日に浴びるとシミになるということで、日光に当たらない、赤ちゃんに自分のカルシウムが栄養として奪われてしまうことなどが原因として考えられる(特発性若年性骨粗鬆症)。

 

*くる病

ビタミンD欠乏や代謝異常により生じる骨の石灰化障害である。典型的な病態は乳幼児の骨格異常で、小児期の病態を「くる病」、骨端線閉鎖が完了した後の病態を「骨軟化症」と呼び区別する。

後天的要因の典型的な原因は誤った生活習慣や食習慣で、紫外線の照射不足によるビタミンD欠乏により、カルシウムの吸収が進まないことや副甲状腺機能亢進症によるリン酸排泄量の過剰による。(Wikipediaより抜粋)

 

リウマチ、膠原病などは日に浴びてはいけないと言われているが、その場合、他の方法でビタミンDを入れてあげなければ圧倒的に量が足りなくなる。その結果、より一層炎症が悪化してしまう。

現在、大きな研究でガンのリスクを下げると確実に言われているのは、私の知る限りビタミンDのみである。脂溶性ビタミンとはいえ、4000IU程度を摂取させても、過剰な分は排出されることが分かってきており、過剰摂取よりも、不足が深刻な問題である。女性においては不妊症との関連も示唆されている。

 


・女性ホルモンとビタミンD

 

妊娠時は身体には非常に多くのストレスがかかっており、大量のTNF-αがつくられている。産後うつの原因もTNF-αではないかともいわれている。その他、妊娠に伴って起こる腱鞘炎や手根管症候群などについても、胎児という非自己を長期間抱えていることで、免疫反応が起こり、慢性炎症が起こり続けていることで発生する可能性がある。

ビタミンDと卵巣機能には密接な関係があり、性腺ホルモンなどのステロイドホルモンはコレステロールが原料になっており、そこにビタミンDがくっつくことによって黄体ホルモンがつくられる。

そのため、ビタミンDの不足がPMS(月経前症候群)や生理不順の原因になる。逆に生理周期がきちんとしている時は、黄体ホルモンが十分に出ているとも言える。

更年期障害の原因はエストロゲンの減少と言われているが、黄体ホルモンとのバランスが重要であり、閉経前に先に黄体ホルモンが減少し始めるため、それに合わせてエストロゲンが減少し始めると言われている。そのため、黄体ホルモンの分泌量を維持することが更年期の症状を予防、抑える上で大切である。最近では糖分が多く、ハイカロリーの食べ物や飲み物が増えており、1000kcalを軽く超えてしまうものもある。しかしヒトの体は一気に1000kcalのものを処理できるシステムが備わっていないため、どこかにひずみが来てしまう。

男性にも女性ホルモンはあり、慢性炎症があり、メタボリックシンドロームのような状態で皮下脂肪が増えているなど、女性ホルモンの量が多くなっている人の場合では、前立腺のリスクが高まることが分かっている。皮下脂肪からもエストロゲンが分泌されることが分かっており、更年期の女性に脂肪が付きやすい原因として、卵巣での分泌量低下を皮下脂肪からのホルモン分泌によって補っているということがある。皮下脂肪と内臓脂肪は、同じ脂肪細胞ではあるものの、機能的には全く異なるものであり、分泌されるサイトカインも異なっている。

 


・多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)とビタミンD

 

診断基準

1. 生理不順がある

2. 多嚢胞卵巣のエコー所見

3. 血中男性ホルモンが高値、または黄体ホルモンが高値で卵胞刺激ホルモンが正常

 

欧米では、これらの診断基準のうちの2つを満たせばPCOSと診断されるが、日本では産婦人科の力が強く、3つすべてを満たさなければ、PCOSと診断されない。

そのため実際には、ニキビの治りが悪く、毛深いといった症状があればPCOSによるものである可能性も多い。原因は解明されていないが血糖を下げるホルモンに異常があるのではないかと言われている。

これは10人に1人が抱えている問題で(糖尿病の有病率と同じ)、隠れてしまっていて見つけられていない例も多い。乳がんのリスクが5~6倍になることから、早めの治療が重要である。適切に治療を行い、ライフスタイルを変えていければ、半年から1年で劇的に改善する。

この病気に対しても、ビタミンDの有効性が確認されており、一日6000IUを一か月処方したところ、卵巣年齢の指標であるAMHAnti-Mullerian Hormone:抗ミューラー管ホルモン)の値が上昇し、卵巣が若返ったという結果が出た。産婦人科の先生はこの値は戻らないとしているが、私のクリニックではビタミンDを加えるだけで何人もの人の値が改善しており、不妊にも良い結果が出ている。

また、ビタミンADが多いと頭の良い子が生まれるという研究もある。

 

PCOSのリスクとして

1. 心臓、血管系の病気

2. 肥満

3. 糖尿病

4. 高血圧

5. 子宮体ガン

6. 乳ガン

7. 抑うつ、不安症

 

*多嚢胞性卵巣症候群(Polycystic Ovarian Syndrome):卵巣の表面が肥厚し、排卵が行われず、滞留した卵胞によって卵巣が多嚢胞化するもの。場合によってはホルモンバランスが崩れることにより、声が低くなり、髭が生えてくるなど、患者の容姿が男性化するため、奇異の目にさらされることがある。(Wikipediaより抜粋)

 


・男性ホルモンとビタミンD

 

日本には男性ホルモンが低下している人が多く、ビタミンDが不足すると、男性ホルモン量が低下する。クリニックでは、始め男性ホルモンを処方しているが、だんだんとビタミンDだけでコントロールできるようになってくる。

日焼けしている人の方がなんとなく強そうだというイメージから始まった研究では、沿岸部の人は内陸部の人に比べて圧倒的に男性ホルモンが多く、ビタミンDとの関連が明らかになった。

 


・インスリン抵抗性とビタミンD

 

メタボリックシンドロームの原因にインスリン抵抗性があり、インスリンがたくさん出るほど太る、老化する、ガンになる。そのため、これらを予防するにはインスリンの効きを良くする必要がある。

インスリン抵抗性を改善すると言われているのは、ビタミンDとカルシウムである。これらは単一ではなく、組み合わせることで効果を発揮する。それにより、糖尿病のリスクの低下、メタボリックシンドロームの予防にも有効である。また、中性脂肪が高いという人についてもビタミンDの不足が考えられるため、最近、花粉症がひどくなってないかなどの免疫に関わることや元気が無くなってきた、筋肉が減ってきたなど問診で確認していく。ビタミンD不足が認められた人では、600IU15~20㎍)程度摂取できると良いとされているが、実際は7~8㎍しか摂れていないと言われている。十分量を摂るためにはサプリメントを上手に使っていく必要がある。

 


・インスリン抵抗性と糖尿病

 

摂取カロリーと糖尿病の関係を調べたデータでは、高度成長期をピークに摂取カロリーが高くなり、それ以降は下がってきているにも関わらず、糖尿病の罹患率は高くなっており、糖尿病の原因はカロリーの量だけではないということが明らかになってきた。

考えられる要因としては、食事の内容の変化があり、かつての日本人は穀物(五穀米、玄米)を摂取する割合が高く、それらに含まれる成分が腸内環境を良好に保っていたが、動物性脂肪(飽和脂肪酸)や白米の摂取が増えたことにより、日和見菌が悪玉菌優位となり、炎症が起こる。そこからインスリン抵抗性が起こってくることが問題になっている。運動をしていたり、ビタミンDを摂っていれば、自分の体で炎症を抑えることができるので、太りにくくなる。カロリーを制限しているにも関わらず、痩せないという場合はインスリン抵抗性が疑われるため、まず腸内環境を整えていくことが重要である。

糖質制限はインスリンを出させないための食事であるため、有効である。

 


・ビタミンDを満たすために

 

体内のビタミンD80%は日光に当たることで合成されるが、実際に当たる時間は10分ほどで良い。

また室内でも窓越しに光が入ってきていれば、露出の多めの服を着て浴びることで同等の効果が得られるとされている。食材としては、きくらげがビタミンDだけでなくβカロテンも高く、食物繊維が腸内環境も整えるという点で、良い食材である。

ビタミンDの合成に寄与している紫外線は主にB波で、直射日光を浴びる必要は無く、陰日でもいいので10分程度当たることが有効である。しかし、加齢によって紫外線からビタミンDへの合成能力は低下してしまう。さらに高齢者では室内の移動が主になり、一層日を浴びる機会が少なくなることでビタミンDが不足しているケースが非常に多い。

 

ビタミンDが増やしてしまうガンが2種類あり、一つが前立腺ガン、もう一つがメラノーマであるが、賛否両論ある。

 

*インスリン抵抗性:正常よりもインスリンをたくさん出さなければ、正常時と同様に血糖を下げることができなくなってしまった状態。

 


・サプリメントの導入

 

私のために選んでくれたというスタンスが最も重要。最終的にはどんなに高い検査をするよりも、聴診器を当てて、そのドクターの手で検査をしてもらった方が絶対に患者さんの信頼度は高くなる。

リピートしてくれるということは営業的に必要と言うだけでなく、効果があったのか無かったのかを知る上できちんと記録しておく必要がある。

サプリメントを取り入れて、実際に体が変化してくるまでには、血液のターンオーバーなどを考えると2~3か月はかかるということを説明しておく。

 


・サプリメントとニーズの重要性

 

何を処方するのかで最も重要なことは、ニーズを読み違えないということである。その決め手になるのは採血結果ではなく、問診票であり、冷え症があるのか、月経不順があるのか、最後に何を希望するのかということを徹底的に訊いていく。そこにあるものをいかに探し出すかが、きちんとリピートしてくれるポイントである。話もニーズに合っていなければ、いくら長く話しても患者さんには響かない。

そして良くなったかどうかを確認する。それは「病気ではなく、病人を診る」という観点から、採血結果ではなく症状を大事する。患者さんは、良くなっていても痛みがあれば痛いと言ってきたり、全く良くならないと訴えることがあっても、アンケートを細かく取ってみると今まで500m歩くのができないと言っていたのが、痛みはあるけれども1500m歩けるようになっていたりということはよくある。

始めにしつこいほどアンケートで聞いておくと、主訴以外にその人を取り巻く色々な問題が浮き彫りになるため、不足している栄養についてなどの話がスムーズにできるようになるというメリットがある。

 

 

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○月商50万円からのドタバタ繁盛記

 

・開業と移転までの流れ

 

慈恵医大には東洋医学外来というものがあり、大学を卒業して週に一度、鍼治療の外来で働いており、そこの師匠から駅から徒歩一分以内のところに開業しなさいという話をされたことを信じて、恵比寿駅から徒歩1分のところに開業。

このクリニックをつくる時には、何人かの若手が集まって、こんなことをしたら面白そうだという案を出し合っていたが、そこで挙がった共通の話題が「運動」であった。現在は渋谷セントラルクリニックという名前で営業しているが、当初はドクターズジムというキャッシュでお医者さんがジムをやったらどれだけ面白いことができるんだろうという考えからスタートした。

そこで加圧トレーニングの有名なジムをいくつか回って体験したところ、どこもひどい筋肉痛が出て二度と行きたくないと思うほどであったが、試行錯誤をして実際に患者さんで行ってみたところ、痛みが楽になったという人も出るようになり、どんどんやり方を工夫していくようになった。しかし、1~2か月は売り上げが50万円ほどしかいかなかった。当初はエクササイズだけできればいいと考えていたので、加圧トレーニングと加速度トレーニングマシン、高負荷の有酸素運動マシンだけで営業していた。ある程度お客さんが増えてきたこととエクササイズの限界も知ることができたので、渋谷に移り、ライフスタイルを変えていくことに重きを置いたクリニックを開院。

始めはダイエットを希望する方が非常に多く、加圧トレーニングと糖質制限を行うことで、70%の人には大きな結果が出たが、効果の出ない30%の人に対して非常に悩んでいた。

そのような人に対しては、食事を徹底的に見直そうということで、毎日献立をメールで送ってもらうなどの管理をして、10%は改善することができた。しかしやはり残りの20%の人は、高いお金を払ってもらっている割に効果が出ないという状態で、なにかこの人たちには共通点があるのではないかと考えていたところ、一つ気づいたことはこの方たちはトレーニングを始める前からすでに「疲れている」ということであった。そのため点滴を変えたり、サプリメントを変えたりと色々と試していたところ、アメリカの学会で、脂溶性ビタミンとホルモンが重要であるということを知り、クリニックに来ているお客さんの成長ホルモンの値はどうなっているのかを測ってみることにした。

その結果、痩せない人、朝起きれない、イライラする人は軒並み成長ホルモンの値が低いことが分かった。このような人たちは、本来成長ホルモン分泌が飛躍的に高まるはずの加圧トレーニング後に測っても値が全く変わらなかった。

現在は食事などを含めた包括的なアプローチとして、料理教室もやっており、若い人たちが全然料理ができないことに驚いたと同時に食事療法は意味が無いということにも気づかされた。あれを食べなさい、これを摂りなさいといっても、その食材をデパートやコンビニで買うという頭しかなく、自分で手を動かして何かをつくるということはほとんどない。その穴を埋める上でもサプリメントは重要。

 


・これからのライフスタイルのデザイン

 

現在は年に6回ほど海外に行くが、そこで感じることは、明らかにアンチエイジングではなく、機能を戻すというエイジリバーサルの時代に入ってきているということである。痛みのあった人が痛みが無い、杖をついている人の杖が要らなくなる、若返りたいということを望む人が増えている。

これからはよりホリスティックな医療が重要になっていき、スマートフォンで自分の体の状態を検査できるようなソフトが出来上がりつつあるため、医療機関で高額な検査を受けるという人は減っていくと考えられる。そのため、ライフスタイルの組み合わせをいかにして提供できるかが重要である。

商材について最も重要視しているのはやはり安全性で、その次に効果、次にその商品を安定供給できるかということである。

 


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